うっわあ。大変な所に来ちゃったなあ……。
入学式の日、僕は大学の講堂にやって来て30秒で戦意喪失してしまっていた。
見渡す限り、人、人、人。
そして、どこか焦点が合っていない無数の目。
これじゃ人が多すぎて友達なんかできなそうだ……。
そしてそれをハイエナのように目を光らせて追っている在学生たち。手にはたくさんのビラがあって、押し売りのように配っている。
とりあえずどこかのサークルには入らなきゃ。
勇気を振り絞って近くの人に声をかけてみる。
「あのー」
「あ、君新入生?! 俺は○○学部の△山って言うんだけど、君テニスに興味ない? あるよね? そうしたら☆※あfふbn#h〜」
だ、だめだ。早口すぎて何言ってるか分からない。
あれよあれよという間にアプリのIDは交換したけれど、きっと連絡なんて取らないだろう。
その日からは本当にあっという間で、時間はめまぐるしく過ぎた。
ある日僕は夢を見た。
クラスメートが「どこ入るか決めた?」なんて盛り上がっている。
僕は聞かれてもうまく返すことができない。
あれ? 僕、もしかして乗り遅れてる?
みんなちょっと待ってくれえー!
みんなを呼び止めたところで夢は終わった。
「でも、夢とも言い切れないんだよなあ」
デジタル時計は4月ももうすぐ終わることを伝えていた。夢はここまで散々見てきた風景を再生しただけだった。